成分解析

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naとは何か
「ラウレス硫酸フリー」表記の落とし穴

「ラウレス硫酸フリー」と書かれたシャンプーに変えたのに、頭皮の乾燥が改善しない——そういう相談をサロンで受けることがあります。成分表を確認すると、多くの場合オレフィン(C14-16)スルホン酸Naが洗浄成分の2〜3番目に入っています。

この成分はラウレス硫酸(SLES)ではありません。ただ、洗浄力と刺激性はSLESとほぼ同等です。「フリー」の表記が何を意味していて、何を意味していないのかを整理します。

成分表の読み方についてはまず「シャンプーの成分表の見方」を確認しておくと、この記事が理解しやすくなります。

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naとは

正式名称はソジウム C14-16 オレフィンスルホン酸(AOS:Alpha Olefin Sulfonate)。炭素数14〜16のα-オレフィンを三酸化硫黄で処理し、加水分解・中和したアニオン(陰イオン)界面活性剤です。石油由来またはパーム核油由来の原料から作られます。

化学構造上の分類はスルホン酸塩(sulfonate)であり、ラウレス硫酸に代表される硫酸塩(sulfate)とは別の化合物です。この点において「ラウレス硫酸フリー」の表記は技術的に正確です。

名称の整理

  • ラウレス硫酸Na(SLES):化学構造に「-O-SO₃」(エーテル硫酸塩)を含む
  • オレフィン(C14-16)スルホン酸Na(AOS):化学構造に「-SO₃」(スルホン酸塩)を含む
  • 両者は別の化合物。「ラウレス硫酸フリー」にAOSが含まれていても、表記は違反ではない

洗浄力と刺激性:SLESと比較するとどうか

化合物の種類が違っても、洗浄力と刺激性は似ています。

ラウレス硫酸Na(SLES)にはエトキシ化の度合い(グレード)があります。SLES-1(エチレンオキシド1モル付加体)は洗浄力が最も高く、SLES-2/SLES-3と度合いが上がるにつれ穏やかになります。市販シャンプーに多く使われるのはSLES-2またはSLES-3です。

AOS ≈ SLES-1 相当
← 洗浄力が強い  穏やか →
SLES-2/3 市販品の多数

AOSの洗浄力はSLES-1と同等とされており、SLES-2/3より高い傾向があります(参考:米国化粧品成分審査委員会CIR評価、Scheibel 2003 JCIS報告)。「ラウレス硫酸フリー」のシャンプーに切り替えたのに、実際にはより洗浄力の強い成分に置き換わっていたというケースが起きます。

なぜ「サルフェートフリー」シャンプーによく使われるのか

AOSはラウレス硫酸・ラウリル硫酸(SLS/SLES)を避けたい処方の代替として使われます。「サルフェートフリー(硫酸塩フリー)」の表記が成立するのは、AOSがサルフェート(硫酸塩)ではなくスルホネート(スルホン酸塩)だからです。

消費者が「サルフェートフリー」に期待しているのは「頭皮に刺激が少ない」という機能的な意味であることが多い。化学分類の正確さと、消費者が期待する「穏やかさ」にギャップが生まれやすい成分です。「サルフェートフリーは本当に良いのか」も参考にしてください。

安全性の評価

AOSの安全性については複数の機関が評価しています。

CIR(米国化粧品成分審査委員会)

すすぎ流す製品での使用は安全

通常配合濃度(3〜8%)では皮膚安全性に問題なし。5%では軽度刺激、10%以上では中程度の刺激。シャンプーとして洗い流す用途では通常問題にならない。

EWG(環境ワーキンググループ)

スコア1〜2(低懸念)

発がん性・環境毒性・アレルギー性のリスクは低評価。皮膚刺激は軽度の懸念として記録。

毒性や発がん性については問題になるという評価はされていません。「危険成分」という言葉が当てはまる根拠はない。ただし刺激性についての懸念は実在します——特定の頭皮状態に対してです。

頭皮への影響:誰が注意すべきか

AOSを含むシャンプーが全員に問題あるわけではありません。健康な頭皮で脂性〜普通肌の方には通常問題になりにくい。注意が必要なのは以下のケースです。

注意が必要なケース 理由
乾燥頭皮・乾燥肌の方 必要な皮脂まで除去してしまう。頭皮のバリア機能が低下した状態では過剰な洗浄になりやすい
カラー・ブリーチ後の方 ダメージでキューティクルが開いている状態でAOSが接触すると、さらに刺激を与える可能性がある
頭皮が敏感・かゆみが出やすい方 刺激性界面活性剤への反応として、かゆみ・赤みが出やすい。頭皮のバリア機能が低下していると影響を受けやすい
縮毛矯正・パーマ直後の方 アルカリ処理後は髪・頭皮ともに傷んでいる状態。回復期には洗浄力の強い成分は避けた方が無難

成分表の2〜4番目にAOSが来るシャンプーは配合量が多いと考えてください。成分表の記載順は配合量の多い順です(ただし0.1%未満の成分は順不同)。

AOSが配合されている主なシャンプー

「ラウレス硫酸フリー」を謳う製品の中で、AOSが洗浄成分として使われている例を挙げます。

YOLU カームナイトリペア

成分表の3番目(洗浄成分の3つ目)

アミノ酸系(#1)+ラウロイルグルタミン酸ジの次にAOS。配合量はかなり多いと推測される。敏感頭皮・カラー毛への影響が気になる点。

ラサーナ プレミオール(2025年2月リニューアル後)

成分表の5番目

「ラウレス硫酸フリー」をパッケージに明記しながら5番目にAOS配合。価格帯と訴求ポイントを考えると気になる点。

成分表でAOSを見分けるには「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」という表記を探してください。

木村芳樹
「ラウレス硫酸フリー」と書かれたシャンプーに変えたのに頭皮の乾燥が改善しない、という相談をよく受けます。成分表を見るとAOSが2〜3番目に入っているケースが多い。化学的な名前が違っていても、頭皮への洗浄力の影響は似ています。シャンプーソムリエとして正直にお伝えすると、「サルフェートフリー」のラベルより、成分表の2〜3番目に何が書いてあるかを確認する習慣の方が、自分に合ったシャンプーを選べる確率が上がります。

木村芳樹 — シャンプーソムリエ

よくある質問

AOSはラウレス硫酸より刺激が強いですか?

市販シャンプーで主に使われるSLES-2/3グレードと比較すると、AOSの洗浄力はやや強い傾向があります。ただし「危険」という表現は適切ではなく、毒性の問題ではなく洗浄力の強さの問題です。

AOSが入っているシャンプーは全部避けるべきですか?

健康な頭皮・普通〜脂性タイプの方には通常問題ありません。乾燥頭皮・敏感肌・カラー毛・パーマ毛の方は、AOSが成分表の上位(4番目以内)に来るシャンプーは見直す価値があります。

自分の頭皮に合うシャンプーをどう選べばいい?

まず無料の頭皮診断で頭皮タイプを確認してください。乾燥・敏感寄りの頭皮なら、アミノ酸系主剤でAOS・SLESが5番目以降か入っていないシャンプーを選ぶ基準にできます。より詳しく確認したい場合はカウンセリングで成分表を一緒に見ることもできます。

成分表の2〜3番目に何が書かれているかで、頭皮への影響は大きく変わります。まず自分の頭皮タイプを確認してから選びましょう。

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